今回制作した作品を例にして、EOS 60Dなどの一眼デジタルカメラで動画撮影する時の、レンズの選択と、絞りの設定について解説していくね
撮影で使用したのはEOS 60Dなので、センサーがASP-Cサイズのカメラの場合はどのカメラにも当てはまるけど、5DMkIIのような、フルサイズセンサーの場合は、若干話が違ってくるので、その点は注意してね
今回使用したレンズは単焦点3本と、広角ズームが1本
左からシグマ30mm f1.4、ツァイス50mm f1.4、サムヤン85mm f1.4、シグマ10-20mm f3.5
ちょっと節操の無い取り合わせの上に、キャノンの純正が無い理由は以前記事でも書いたので省略
メーカーは関係なく、この組み合わせがあれば、大抵の映画は撮れるろ言っても過言では無いと思う
強いて言うならプラス70-200mm f2.8のレンズがあればほぼ完璧
フォーカスを送る必要があったのと、NDフィルターの交換をスムースにするために、Red Rockのリグにこんな感じに組んでみた
ごついし重くなるけど、このくらいの方が大きいカメラに慣れてる僕としてはオペレーションはし易いのだ
では実際のショット別にレンズと絞りの設定を解説するね
レンズや絞りを決定するにあたって、最初に基準になるのが演出意図に合わせた遠近感
続いて、同様に演出意図に合わせた被写界深度
シャッタースピードは1/50、ISOは320で固定が基本だから、絞りを被写界深度で選んだ場合、明るさはNDフィルターで調節していく事になるんだね
まず、メインタイトルのロングショット
このショットでは、ベンチに座る女性の孤立感をそれとなく漂わせるために、背景と手前の木を分離させたかったんだ
そのためにはある程度望遠で、尚かつ絞りを開けて被写界深度を浅くする必要があるんだね
このショットに使ったのは85mm、絞りは開放に近いf2.0
NDフィルターは2枚を組み合わせてND32まで落とさなければいけなかったよ
これで、前後がぼけて、ドリー移動と合わせて、ちょっと幻想的な映像が撮れたんだ
ちょっと話はそれるけど、このドリーは水道管と、スケートボードのホイールを組み合わせた手作り
さすがに、ここまでの望遠だと、僅かな揺れも拾ってそのままだと若干厳しいのだけど、FCP Xの手ぶれ補正機能が思いの外うまくマッチして浮遊間のあるカットになったんだ
このFCP Xの機能は決して万能ではないので注意が必要だけど使い方次第で効果が得られるという事だね
話は戻って、男が登場するワイドショット
これは10-20mmを15mm付近で使用、f値は8
このショットは現実社会からの侵入をイメージしてるから、むしろパンフォーカスでOK
この焦点距離なら被写界深度も深めで、レンズ特性的にも安定感のある絞り値を選んだんだ。
そしてベースになる切り返しのショット
広めのなめのショットは動きのわかる2ショットとしては個人的には気持ちのいい遠近感が出ると思う50mmを使用
手前をぼかし気味で、メインの役者は全体にフォーカスが合うように絞りはf4
DSLRを使って撮影する時の大きな罠は、ぼかせるからと思って何でもかんでも開放近くで撮ってしまう事
芝居が絡めば必ず体も前後する訳だし、顔や体にだって幅がある訳だから極端に被写界深度を浅くしすぎると、顔の一部にしかフォーカスが合っていない、見づらい画になりかねないんだ
体も入っているようなショットなら、以前紹介したiPhoneアプリ等を利用して、深度50cm以上はあるように設定した方が良いと思うよ
次は切り返しのアップ
アップは85mmから100mmくらいが心地の良い画が撮れる遠近感だと思うので、ここでは85mm
被写界深度は広めより若干浅くなっても良いと思うけど、やはり40cmは確保した方が良いと思う
ここではf8にセットしたよ
正面からの2ショット
背景との距離にもよるけど、適度に分離間のある遠近感で50mmを使用
f値は4で、距離が離れた分被写界深度も1.5mほどで、ベンチの幅を考えれば程よい深度と言えると思う
続いて女性の主観、男のワンショット
これは印象が強く残るカットだよね、適度な圧迫感を残すために、敢えて広角ではなく、ASP-Cでは標準に当たる30mmを使用
ここでは表情を強調するため、若干被写界深度を浅めの30cm辺りに設定それでも絞りはf5.6
そしてラストショット
これはドリーバックの動きを強調するために広角15mm付近を使用
f値はほぼパンフォーカスで8
まだカットは数種類あるけど、大体のレンズと、絞りの選択基準は分かってもらえたと思う
やっぱりこれだけの単焦点レンズを揃えないと、きれいな画は撮れないのかと思ってる人がいたら、それは大間違いだよ
f値を見てて気付いた人も多いと思うけど、今回使用したf値は、冒頭と後半女性が立ち上がった直後のドリーショットを除いては全て4以上
つまり、中級のズームレンズでも利用出来るf値なんだね
アップも70mmあれば、十分対応は可能だよ
僕の大袈裟なセットアップは、飽くまで操作性の重視と、プロとしての、こだわりとして単焦点を使ってるだけ
ぼけ足等は確かに単焦点の方が優れている
ただ、こんな事を僕が言うと身も蓋もないんだけど、撮る側がこだわってるほど、見る側が理解してるかどうかは疑問もある
特に映画は写真と違って、その1枚が全てではないからね
前にも紹介した、シグマの17-70mm f2.8-4が1本あれば、かなりクオリティの高い映像の映画が作れてしまうと思うよ
実は僕も1本持ってて、プライベートの旅行なんかには持ち歩いてるけど、かなり、良いレンズだよ
次回は音声について解説するね
ク~ル?